ノーキル政策施行から半年
台湾のシェルター内部を取材
Six months into the no-kill policy, we look inside Taiwan's shelters
ザ・チャイナ・ポスト
2017年7月15日 土曜日 午前7:58(台湾現地時間)
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【台北 台湾】 1週間前、台湾南部のシェルターで、保護されて4日になる1匹の黒犬が死にました。それまで殺処分されていなかったのは、台湾では安楽死が違法だからです。むしろ、悪天候、暑さ、騒々しさ、超過密状態などの条件が重なったシェルターで、その犬は過度のストレスに晒されていたようです。この犬が死んだことを聞き、一般市民や保護される以前にその犬を知っていた人々は怒りを爆発させました。コンビニエンスストアの周りをパトロールする姿で知られ、客にとても愛想が良かったので、大半の人が飼い犬だと思っていました。シェルターに保護されなければ、今も死なずに元気だったろうと主張する識者もいます。
A Double-edged Policy
政策は諸刃の剣
台湾政府による完全なノーキル政策が全国展開されて半年近くになります。政策によって、官営シェルターで健康な動物が安楽死させられることはなくなりましたが、それと同時にシェルターの過密状態や資金不足といった問題が悪化したのです。政策に対する適切な支援がなければ、安楽死の難を逃れた動物たちは一生惨めな暮らしをすることになると、動物愛護運動家たちは警告してきました。台湾の22の行政地区には33の官営シェルターがあり、どれも収容可能数は数十から数百くらいです。しかし行政院農業委員会のデータによれば、早くも昨年の時点で、多くのシェルターがすでに定員に達するか或いは定員を超過していたのです。
Packed to Overcapacity
すし詰めにされ過剰繁殖
殺処分を一切無くしたのは良いことかもしれませんが、資金が乏しく過密状態のシェルターで、動物たちは一体どんな世話をしてもらえるのでしょうか。 「安楽死ゼロ政策の施行後、ここの動物たちの数は増えてきました」と、台北市の動物保護事務所の責任者 イェン・イー・フォン(嚴一峰)氏は言います。嘉義市(かぎし)では、動物預かり施設も繁殖過剰状態です。嘉義市のあるシェルターの管理者は、「うちのシェルターの動物たちの数は、明らかに増えてきました」と言います。ホワンという名のその管理者は、ノーキル政策の施行以来、シェルターでは40匹を超す犬を保護していて、それは収容可能数の2倍に相当する数だと語りました。事実、十分な医療資源の無い、間に合わせのスペースを現在使用中だと、ホワン氏は言います。結果的に、人懐っこい犬や子犬ではなく「危険な」犬だけを捕獲するようになりましたが、それでも数を減らせないでいます。宜蘭県(ぎらんけん)は2015年から安楽死ゼロ政策を実行しています。宜蘭県官営のシェルターでは、この2年間でどんどん動物の数が増えてきました。収容能力を50%超過し、台湾一混みあったシェルターになりました。「安楽死」は無くなりましたが、はたして良い一生が保証されるのでしょうか。

チウ・ユィ・シュアン(邱于軒)氏は、台湾動物虐待防止協会のプロジェクトマネージャーです。犬たちにとって過密状態は安全性への懸念があると彼は言います。「ひとつのケージでたくさんの犬に餌を与えれば、お互いに噛みつきあい、感染症や疾病があっという間に拡散するのは目に見えています。それがもっとも憂慮すべき点です」とチウ氏は語っています。今年2月、宜蘭県のシェルターで犬パルボウイルス感染症が大流行し、感染拡大を抑えるため、72匹の犬の殺処分をしなければなりませんでした。台南市のシェルターでは、保護する動物の数をコントロールするためにいくつかの試みがなされています。宜蘭県と同じく、台南市も2015年に安楽死ゼロ政策を開始しました。ハン・チェン・カイ(洪振凱)氏は、台南市動物検疫保護局下にあるシェルターの長官です。TNR(捕獲し不妊去勢して元の場所へ戻す)や狙いを定めた捕獲、使役犬の訓練をするプログラムなどの手立てを使い、台南市はシェルターの個体数の抑制に成功していると彼は語りました。「しかし、こうした方法がいつでもうまくいくとは限りません」とハン氏は言います。すべての犬が使役犬になれるわけではないし、狙いを定めた捕獲やTNRには地域の協力が必要です。「もし、人々の望みが野良状態の動物が全く『いなくなる』ことであるなら、動物保護の取り組みは決して成功しないでしょう」と彼は言いました。
The Real Culprit
真犯人
動物愛護運動家の多くがチャイナ・ポスト紙に対し、野良動物の問題を解決する鍵は、「捨てないで。不妊去勢手術をしよう」というキャッチフレーズにあると語りました。しかし、台湾で不妊去勢手術やマイクロチップの装着を促進することは難しく、それはそうした問題は飼い主に起因するものであり、彼らには自由意志があるからだと、ヘルプ・セーブ・ア・ペット基金のプロジェクトマネージャーであるカオ・チェン・チュン(高晨鈞)氏は言います。ペットや野良動物の取り扱いに関する教育に関して、台湾にはまだ改善の余地が大いにあるとカオ氏は言い、その点において台湾はまだ「後進国」であると述べています。飼い主は不妊去勢手術やマイクロチップの装着に懐疑的であることが多く、犬たちを傷つけることに懸念を抱く人から、必要性を疑問視する人まで多岐に渡ります。「ペットに対して責任を負うことを嫌ってマイクロチップの装着を拒否する飼い主がたくさんいます」とハン・チェン・カイ氏は言います。
'Can't force them to come to class'
「講習会へ来るように強制することはできない」
不妊去勢手術は重要な保護対策であり、ペットが病気にかかるリスクを減らすだけでなく、攻撃性を抑え、捨てられたりシェルターに保護されたりするリスクをも減らすのだと、動物愛護運動家たちは言います。さらに、不妊去勢されていないペットは野良状態のものと交尾することもあり、個体数過剰の問題を悪化させるのです。「そして地域住民はうんざりし、そうした野良犬や野良猫を捕まえるようシェルターに連絡するのです」とチウ・ユィ・シュアン氏は語りました。質の高い生活を追求する人が多くなればなるほど、外をうろつく動物を嫌い、どこかへ連れていくようシェルターに電話する人が増えるとチウ氏は言います。マイクロチップの装着についていえば、それは迷子になった際に身元が分かるようペットにIDカードを与えるようなものです。もし飼い主が故意にペットを捨てれば、飼い主もペットも特定が可能なのです。「実際、正しいコンセプトを浸透させようと、私たちは頻繁に講習会を開いています。しかし、関心のない人々を講習会に来るよう強制することはできないのです」と、ハン・チェン・カイ氏はため息交じりに語りました。問題は解決できないだろうと考えているそうです。
Short on Funds and Concern
資金不足と関心不足
安楽死ゼロ政策がうまくいっているオランダでは、すべてのペットは生後7週までに、犬自身の基本情報と飼い主の個人情報を入れたマイクロチップを装着しなければならない規則があります。台湾にも、マイクロチップの装着や不妊去勢手術などといったことを規定する、似たような規則があります。問題はそれらが強制ではないということです。「不妊去勢手術に関して言えば、私の意見では、政府の支出が少なすぎるし、彼らは関心がなさすぎるのです」と動物虐待防止協会のチウ・ユィ・シュアン氏は言います。飼い主の多くはいずれかの時点でペットを動物病院へ連れていくだろうから、動物病院を動物保護の最前線に据えるべきだと行政院農業委員会に提案したと、カオ・チェン・チュン氏は言います。マイクロチップを装着していないとおもわれる動物には、獣医師に装着のイニシアチブをとらせるよう提案したのです。しかしそれが現実となるには、政府が動く必要があるとカオ氏は言います。あらゆる非政府組織が、教育プログラムを実行し講習会を手配して、動物の個体数をコントロールしようと懸命の努力をしています。しかし、結局のところそれ(数の管理対策等)がまだ全然足りていないのです。「正直、私は無力感を味わっています」とカオ氏は語りました。
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